新しい太極拳を作ってみました ~なぜ作ったのか?徐式太極拳について②
今回は前回に引き続き、新しく作った太極拳の話です。
かなり私事な話の上、マニアックな内容となりますので、ご興味を持たれた方はお付き合い下されば嬉しい限りです。
過日のことになりますが、立て続けに太極拳イベントを開催してきて、そこで行った太極拳が『徐式(じょしき)太極拳』というものです。
これは一般的な太極拳のように古くからあったものではなく、中国武術家の徐其成(ジョ・キセイ)が作った太極拳からヒントを得て、最近私が作ったものです。
今回は〝なぜわざわざ新しい太極拳を作ろうと思ったのか〟の続きを書いてみたいと思います。
前回の記事になります▼
そして、そもそも『太極拳』とはどういったものなのでしょうか?
良ければ併せてご覧ください▼
徐式太極拳について
五大流派の太極拳を教えることについて
五大流派の太極拳*1は、初心者やご高齢者にとって、又集団レッスンにおいて指導をするには、❝長く難しい❞ と感じているということを、前回にお伝えしました。
ですが、私もその長く難しい太極拳を、長年ずっと教えているわけです。
では今までどうやって一般の方に、特に初心者や運動が苦手な方、ご高齢の方に楽しんでもらえる様にそれらの長く難しい太極拳を教えてきたのかというと、
〝生徒さんの身体のリズムやトレーニング計画に合うように、自分で短く作り変えたプログラムを用いて教えている〟のです。
これを聞いても、指導する立場の方以外はピンと来ないかも知れませんが、
それぞれの太極拳の基本動作はむろん勝手に作り変えたりはせず、誰でも行い易いように各々の太極拳の套路(とうろ:型、技)を再編集して教えている、ということなんです。
今現在も、このプログラムを用いて日々レッスンを行っているわけですが、
五種類の太極拳をルーティーン化して行うことは、動きの種類が増えるという観点から様々な身体の部位を使うことが出来る為に、健康にとても良く、また飽きずに楽しめるという利点があります。
勿論、長く難しい本来の太極拳を希望する生徒さんもおられるので、その指導も行っています。
ですが、全部の套路を完成させて熟練する為には何年もかかるので、じっくり練習したい人向けであり、健康の為に気軽に通って下さる多くの生徒さんには、あまり向いていないと感じます。
そして、こうすることで私のクラスでは、初心者やご高齢の方、または経験者・上級者であっても難なく太極拳を楽しめることが出来ています。
では、、、
「今までの五大太極拳のこのプログラムだけでもう充分ではないのか?」という声が上がりそうですが、やはりそうではない理由があります。
結局、なぜ新しく作ったのか?
前回の記事を入れると、ここまでかなり前置きが長くなりましたが、
結局なぜ新しく太極拳を作ったのか、まとめると、
〝初心者やご高齢者に向けたレッスンや、大人数での集団レッスンにおいて、健康を養う為に参加される生徒さんがスムーズに行えて、無理なく楽しめる太極拳のレッスンをしたい〟という理由からで、
その為には、
『オリジナルの太極拳の方が、〝現在の日本人の生活スタイルを考えた上での健康の為に行い易い〟のではないか』
と考えたからです。
そしてそれは、創作した私にとって行い易いということでもあるし ❝沢山の生徒さんに教えてきた経験上から❞ ということが大き所いです。
改めて、詳しく挙げてみます。
1.『五大流派の太極拳のそれぞれを順番通りきっちり全部覚えようと思ったら、長すぎて難しいから時間も掛かって大変』
なぜなら、古来からある太極拳は長い型からなるものであり、また動作的にも、太極拳は若い時から武術をしていた武術家が歳をとってから行っていたもので、一般の人、特に運動の苦手な人や初心者、ご高齢者にはかなり難しい面があるということです。
そして、様々な方が一同に動く集団レッスンにおいては、皆が理解してスムーズに進めるのが更に難しくなります。
このことを考慮して、受講生のトレーニング計画を考える上で、最初から行い易い太極拳があればプログラムも作り易いと考え、じゃあその太極拳を自分で作ろうと思いました。
そして、五大太極拳は先程挙げた様に、ある一部分を切りとってプログラム編成をすることで、長い・難しいという欠点を補うことが出来ましたが、それでも私にとっては、やはりオリジナルの方がトレーニング計画が作り易いのが事実です。
更に徐式太極拳は、集団レッスンに対応しやすいものとして作っているので、尚のことになります。
2.『五大流派の太極拳は先生によって解釈が違い、テキストによっても違うので理解するのが難しい為、どう教えて良いのか混乱することがある』
古今の武術の指南書もそうですが、DVD動画などを見て確認しても、指導者によって技術的な解釈が違い、動作の評価基準が変わるということは実際に沢山あります。
指導者の数があるだけ、武術の理解が違うといっても過言ではありません。
その為、本来からの伝統の武術(太極拳)をそのまま伝えようと思っても、伝えきれない部分が出てきます。
しかし、新しく太極拳を作るということは、創作した張本人が教えることになる為、動作の基準もはっきりして迷うことはないので、教える方も習う方も混乱せずに済みます。
3.『オリジナルに太極拳を作ることで、トレーニング計画が作り易くなる為、生徒さんの運動レベルや教室の種類によって、例えば対面教室と非対面(オンライン)教室や実施する場所の広さ狭さ関係なく、それぞれに適した套路数・難易度を変えることができる』
昔からある五大流派太極拳では、それぞれのレッスン内容によって動作をピックアップしていかないといけない為、プログラムを作るときにかなり苦労するといったことを先程も書きました。
そしてその上、套路(とうろ:技、型)の組み合わせや、難易度、身体の方向、教室の広さを考えての動作、などを考えないといけません。
その上、集団レッスンにおいてプログラムの途中から練習に参加する人がいても、皆がスムーズについていけるかを考えなくてはいけません。
その点、徐式太極拳は套路自体がオリジナルで、トレーニング計画(何をどの様に教えるか)もオリジナルであり、全て自作なわけなので、そうしたことが行い易いといった利点があります。
又こうすることで集団レッスンであっても、個人レッスンでも、又場所の広さ狭さを考慮するにしても、スムーズに対応することが出来ます。
4.『今までの太極拳の持つ特徴や長所を活かしながら、更に今までの太極拳にない身体の使い方を取り入れることで、動作が豊富になり、より健康に繋がる』
今までの五大流派太極拳の特徴を生かしつつ、徐式太極拳では初心者でもできるように動きを更に行い易くして、伸ばすというストレッチ的な動作も取り入れました。
これにより太極拳に共通する基本は抑えながら、太極拳という健康の為の運動が持つ魅力が増すと考えています。
またオリジナルな動きの太極拳というのは、今までの太極拳を知る生徒さんにとっても初めて行うものなので、新鮮に感じられるのではないでしょうか。
以上、主にこういった理由からです。
そして、『講師の私にとって行い易いオリジナルの太極拳が、生徒さんに受け入れられて健康の役に立てれば大変嬉しい』ことであって、指導する側にとってはこれは何物にも代え難いことです。
ネーミングについて
徐式太極拳という ネーミングは、前の記事にも他の太極拳の例を挙げましたが、❝楊式太極拳❞ なら楊 露禅(よう・ろぜん)さん、❝陳式❞ なら陳王廷(ちん・おうてい)さん、ということで、私は代々『徐(じょ)』という苗字なので〝徐式太極拳〟にしたということです。
中国では徐という苗字は一般的なものでもあり、分かり易い、覚えやすい、というメリットもあります。
また、徐という苗字の方は多いので混乱しない様に、内容を充実させて広く認識してもらえるように頑張りたい所です。
これは、まだまだこれからなので、努力が必要です。
以上になります。
文章で説明するとなると、結構長くなってしまいました。
そして、これはあくまでも一指導者の意見で、他にも様々な教室、生徒さん、考え方があり、皆それぞれに太極拳を楽しんでおられるということを、ご理解下さればと思います。
また、終始個人的な創作の話となり、伝わりにくい部分もあったかも知れませんが、
ここまでお読み頂いて、本当にありがとうございました。
心より感謝申し上げます。
次回は、五大太極拳の動きの特徴と他の運動との違い、更に徐式太極拳の特徴はどの様なものか、といったことを書きたいと思います。
またまたマニアックな内容ではありますが、お付き合い下されば幸いです。
そして少しでも太極拳にご興味を持って下さったなら、嬉しい限りです。
それでは、非常感謝!
(▲陳式:ちんしき太極拳演武写真、徐其成)