京都は今日は雨ですが、しばらく秋晴れの気持ちの良いお天気が続いていました。コロナ渦にあって、天気の恵みというのは本当に有難いものですね。
過日のことになりますが、立て続けに太極拳イベントを開催してきました。
たまたま2日間の連チャンだったのですが、
1日目は京都立命館孔子学院でのオンライン太極拳レッスン、2日目は国際交流協会での太極拳婚活パーティーでした。
お陰様で沢山の方にご参加頂き大変嬉しく、この場をお借りして心より感謝をお伝えしたいと思います。本当にありがとうございました。
(▼先日に国際交流協会で行った、婚活イベントのことを書いています)
そして、そこで行った太極拳が『徐式(じょしき)太極拳』という太極拳です。
これは一般的に行われている太極拳のように古くからあったものではなく、私の父で中国武術家の徐其成(ジョ・キセイ)が作った「旋円(せんえん)・徐式太極拳」という太極拳からヒントを得て、最近私が作ったものです。
今回、教室の生徒さん以外の方を対象に初めてこの太極拳のレッスンを行いましたが、様々な方とコミュニケーションを取ることが出来て色々と発見があったので、その徐式太極拳のことを書きたいと思っていますが、
その前に、そもそも中国に昔から伝わる『太極拳』とはどういったものなのでしょうか?
長年指導を行ってきたことと、新しく太極拳を作るにあたり考察したことから、簡単にですが少し書いてみます。
マニアックな内容ですが、ご興味を持たれた方はお付き合い下されば嬉しい限りです。
そもそも太極拳とは?
太極拳とは?
そもそも太極拳とは、❝中国の健康法(運動)❞であることは、体験されたことのない方でも、誰もが何となくご存じのことだと思います。
その太極拳の種類では、現在行われているものは沢山あるのですが、基本的には五大流派の太極拳が古くから中心となって盛んに行われています。
それは、
『陳(ちん)式太極拳 /楊(よう)式太極拳 /呉(ご)式太極拳 /孫(そん)式太極拳 /武(ぶ)式太極拳』の5大流派です。
套路(技:型の数)について
日本で最も盛んに行われているのが 「二十四式太極拳(簡化太極拳)」という、楊式(ようしき)太極拳をもとに作られた太極拳です。
これは日本の「武術太極拳」という競技の制定拳にもなっています。
二十四といわれる位ですから勘の良い方はもうお分かりだと思いますが、24個の套路(とうろ:技の連続動作、型)から構成されている太極拳ということです。
となると、もとの楊式太極拳とは、それ以上の套路があるということなんですね。
その通り、なんと85個もの套路から構成されているのです(85の套路:技というのは動作の数ではなく、名前がついている技:型が❝85個❞あるということです)。
なので、技が多すぎて短時間では中々習得できないことから、簡化太極拳として二十四式が出来たというわけです。
陳式太極拳
陳式太極拳は老架(ろうか)式と新架(しんか)式があり、一番長い套路は108式であり、一番短くて38式があります。
楊式太極拳は、二十四式(簡化)太極拳の元となっている85式、108式があります。
武式太極拳は96式の套路から構成されていて、108式や48式もあります。
孫式太極拳は97式があり、これも簡化38式や、13式、108式など多岐に渡り套路があります。
呉式太極拳呉式太極拳は89式があり、又108式の他、色々な数の套路があります。
これら套路はなぜ数が変わるかというと、教える先生によって技の数え方が変わるということがあるからです。
そしてこれらには剣や刀といった武器もあり、更に套路がそれぞれに違ってきます。
伝授されたものが、色々あるということなんですね。 中々複雑です。
以上のことから、太極拳とはまさに「長い長い技の構成から成る、連続動作の運動」といえるわけなんです。
各太極拳の名前について
そして、それぞれの太極拳の名前は、最初に考案して作った人の苗字から取られて付けられています。
陳式 ➤ 陳王廷(ちん・おうてい:1600~1680年頃 )
楊式 ➤ 楊 露禅(よう・ろぜん:1799~1872年)
という感じです。
更にその開祖の人物とは、元々は皆、武術家でありました。
太極拳の❝拳❞は、拳法の拳であり、太極拳は武術であるということなんです。
そして、なぜ武術家達が太極拳を作ったかというと、簡単にいうと、
1つは、食べた物を消化する等の健康の為に作られた、ということ(メタボ対策でもあったかも?)、
2つ目は、武術家達が歳をとって体力が衰えていき、速い動作が出来なくなったために筋肉などの機能を維持する為に作られた、などがいわれています。
そして、最初に出来た陳式太極拳は拳法の動きに氣功の考え方(導引術:氣功)を取り入れて作られたという説があります。
更に楊さんが、北京在住の武術の出来ない一般の方の為に、養生を考えて作られたのが楊式太極拳です。
そして武術とは〝身体の力を最大限に発揮して相手を攻撃できるように作られたもので、戦いの技術〟であるのですから、そこから作られた太極拳とは、『健康の為に身体の動きを最も考慮して編み出された技の集大成の運動』というわけです。
又当然ながら、それぞれの太極拳は動作の特徴が各々違います。
そのことはまた次回、書いてみたいと思います。
そして、そもそも〝太極〟の意味とは?
基本的な話に戻りますが、そもそも太極とは、
『宇宙、そして万物の根源』であるというように解釈されています。
世の中のすべてがここから始まるという意味に、理解できます。
これは、最初とか始まり、というの意味も含まれていて、円という意味もあります。
また、中国・北宋の周敦頤(しゅうとんい)氏*1は、太極が無極から生まれたと説明しています。
つまり、世の中のすべての物事が何もない状態から、少しずつ太極という状態になり、そして色々な変化を辿って、様々な形になったということです。
簡単に言えば、すべてが無から有へとなっていくのです。
そして、太極という言葉は元々易経(えききょう:易学とも呼ぶ)を解釈する本の、十翼(じゅうよく)*2の中の一つである繋辞伝(けいじでん)に出てくる言葉です。
易経とは中国の古典書物で、一般的に占いの本として知られています。
一方、哲学書としても有名で、中国文化の基本である儒教や、道教、中医学などにも多大な影響を与えています。
ざっと、太極の意味に関しての簡単な説明は以上になります。
これも面白い話なので、又いずれもう少し詳しくご紹介できればと思っています。
(▼後程、更に詳しく記事にしました。)
健康効果について
太極拳の健康効果については、適切に行うことで沢山の効果が望めますが、一部挙げてみます。
- 新陳代謝の活性化による、肩こりや腰痛などの筋肉の疲労回復、痛みの緩和
- 体内の循環を良くすることによる、内臓機能の回復
- 免疫力が上がり、自律神経が整うことによる疾病予防
- 関節内の環境が改善されることによる、機能改善(肩や膝の痛みといったトラブルの改善)
- 体重(重心)移動のバランス感覚の向上による、転倒の予防
- 脳トレーニング(頭を使いながら体を動かすことの作用)による、脳の活性化、集中力の向上や認知症予防
- 心理的なリラクゼーション効果、ストレス解消(動的な作業を集中して行うことにより、一種の瞑想状態となり気分がリフレッシュされる)
等々です。
(▼以前も、中国武術や氣功、太極拳の健康効果について書いています)
そして、こうした長い歴史と文化を持つ、健康促進の為の太極拳とは、老若男女、誰にでも出来て楽しめる魅力があります。
この魅力を伝えていきたいという想いで、日々太極拳を教えています。
(▼今回に引き続き、記事を更新しています。)
長くなってきましたので、また次回に引き続きたいと思います。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!
非常感謝!
大辞林 第三版の解説より