11月に入り、秋も大分深まってきました。
月日はあっという間に過ぎ去るので、日々を大切にして励んで行きたいものです。
今回は前回に引き続き、新しく作った太極拳の話です。
かなり私事な話の上、マニアックな内容となりますので、ご興味を持たれた方はお付き合い下されば嬉しい限りです。
過日のことになりますが、立て続けに太極拳イベントを開催してきました。
たまたま2日間の連チャンだったのですが、1日目は京都立命館孔子学院でのオンラインレッスン、2日目は国際交流協会での太極拳婚活パーティーでした。
お陰様で沢山の方にご参加頂き大変嬉しく、本当にありがとうございました。
そして、そこで行った太極拳が『徐式(じょしき)太極拳』というものです。
これは一般的な太極拳のように古くからあったものではなく、中国武術家の徐其成(ジョ・キセイ)が作った太極拳からヒントを得て、最近私が作ったものです。
教室の生徒さん以外の方を対象に初めてこの太極拳レッスンを行い、色々な発見がありましたが、
今回は〝なぜわざわざ新しい太極拳を作ろうと思ったのか〟を書いてみたいと思います。
そして、そもそも『太極拳』とはどういったものなのでしょうか?
前回の記事です。良ければ併せてご覧ください▼
徐式太極拳について
創作元の太極拳は?
新しい太極拳の創作元となったのは、私の父の徐其成(ジョ・キセイ)が作った太極拳からです。
父は現在はおじいちゃんとなり引退しましたが、中国では名の知れた武術家でした。
若い頃は政治家のSPをしたことがあったり、国同士の友好の為アメリカやロシアを武術訪問したり、日本に来て北海道で武術の普及を行ったり、中国のみならず各国で貢献してきたのですが、息子の立場から見ても一生敵わない、武術家としても一人の人間としても大変尊敬する人物です。
▼簡単に父のことを書いています。
中国の百度百科(中国版Wikipedeiaのようなもの)にも掲載されていますので、中国語が分かる方は良ければご覧下さい▼
▼私が主催する研究会の公式サイトにも、父(家族)の履歴を詳しく書いています。良ければ。
https://www.jyokanfu.com/profile
そして徐式太極拳は、その父が作った『旋円(せんえん)・徐式太極拳』という太極拳にヒントを得て作りました。
(▲3年前に父が来日した時に行った、徐式太極拳のイベントの写真です。一番左、青い服が徐其成。)
中国での徐家の仕事
身内の話の続きとなりますが、
父が武術家として活躍するようになって、必然的に回りの家族も父から武術を教わり、関わるようになり、家族や親類の多くは今も中国武術を教える仕事をしています。
私の母(其成の妻)に、弟(次男)、叔母、叔父、そして私、といった所です。
父は武術で生計を立て、家族内外に沢山の弟子を育て、中国武術の普及に貢献しました。
そして、中国武術は、中国では日本のお家芸では柔道のようなものと捉えてもらうと良いかと思いますが、そうした意味では私の家は昔からの技術を引き継ぐ、家元のような立場になりました。
ですが世襲制ではない上、血縁内では私と弟の後に次ぐ者は今の所いないので、現時点ではお弟子さん達に継承されて行っています。
そんな中、私はというと、幼い頃から武術の練習や教育といった面では厳しく躾けられたのですが、思想面では割と自由に育てられて、
若い頃に武術チームの一員として日本に遠征に来たこともあり、縁が出来て大阪体育大学へ編集学して以来、もうかれこれ30年間ずっと日本に居ます。
長男にも関わらず、こうして好きな日本に住むのを認めてもらえているのは有難いことで、現在は太極拳やカンフーを教えることを生業にしている状態です。
そして長年の指導を通して考えてきたことを、いまやっと新しい太極拳を作るということで形にし始めました。
なぜ新しい太極拳を作ろうと思ったのか
基本的な理由
先程の、父や家族の武術での経緯を踏まえて、せっかくなので徐家のオリジナルなものを作りたい、指導に関わり始めてから年月も経ったので、そろそろ自分の考えというものを分かり易い形にして出来れば残したい、という想いがあります。
今までの経験を生かして面白く特徴のある身体に良い太極拳を作って、多くの生徒さんの健康に役立たせたいと、無謀にも?いえいえ、果敢にも!?思ったのです。
そして一言でいうと『太極拳は文化的な側面があり、魅力的で面白いということのみならず〝健康にとても役立つ〟ということを、オリジナルな太極拳で伝えたい』ということなんです。
でも、もう既に優れた健康の為の太極拳があり、しかも何世代にも渡って伝承されてきた太極拳が多くあるのに?わざわざ新しく太極拳を作る必要があるのか?
と、普通誰でも思うとおもうのですが、
『オリジナルの太極拳の方が、〝現在の日本人の生活スタイルを考えた上での健康の為に行い易い〟のではないか』
と考えたからです。
それは創作した私にとって行い易いということでもあるし ❝沢山の生徒さんに教えてきた上での経験から❞ というのが大きい所です。
具体的な理由
指導していて日々感じることは、誠に僭越なのですが、昔からある太極拳は、
❝長すぎて、現在の日本人の生活スタイルに合っていないことがある❞
ということが言えます。
誤解を恐れずに申しますが、これは何も五大流派太極拳*1や他の太極拳を否定しているわけでは全くなくて、
それぞれの太極拳は本当に素晴らしいものではあるのですが、それらの太極拳は套路(とうろ:技、型)が多すぎて長すぎるということなのです。
これはあくまでも個人的な見解ですが、教える上でどうしても困難を伴うことがある、といつも感じています。
また、今までの太極拳は ❝動作が複雑で難しい❞ ということも言えます。
前回の記事でも取り上げましたが、一般的に有名な楊式(ようしき)太極拳の套路は、百八式で、108の技の動作からなるという長いものです。
そして、その中で短くて最も盛んに行われている太極拳の、楊式太極拳から作られた二十四式(簡化)太極拳(24個の技からなり動作の数は24個以上)でも長く、そしてその動作も難しいと感じます。
そして、これは講師の私が「難しい」と言っているのではなく、沢山の生徒さん(単発でのイベントの人数を入れたら1000名以上)に教えてきた経験の中で、意見を聞いたり様子を見たりして考察したことから得たことです。
勿論、これらは全ての人に当てはまるというわけではありません。
五大流派の太極拳が長年に渡り現代にも引き継がれているということは、例え長く難しくても、人々が好んで盛んに行ってきたわけですし、更に流派が分かれて細かく継承されているのですから、大変支持されているということでもあります。
ですが少なくても、私が健康の為に太極拳を指導する中においては、特に初心者の方や忙しい方、ご高齢者にとっては、
「長く難しい套路(技・型)からなる太極拳は煩わしく、却ってストレスとなることがある」ように感じるのです。
現代の日本は昔よりはるかに便利になったとは言え、周知のように時間の余裕がないストレス社会で、今のコロナ騒動で少し変わってきたとはいえ、皆誰もが忙しくスピードを求めて生活している時代です。
そんな中で健康の為に、また心身の気晴らしとして、ゆったりとしたイメージの太極拳を習いに行ってみても「思ったより長く難しく、出来なかった」ということがあり、
はっきりとした目的(試合に出たり検定で級を取ったりする)でも持たないと、また、余程ハマらないと、多くの方が中々継続してやっていけないといったことが起こってくるのでは、と常々感じています。
もちろん人によってそうでないこともあり、先生や教室の在り方も様々だと思うので、これはあくまでも私の経験の中で感じていることです。
そして、この様なことを言いつつ、
そもそも、私もその長い太極拳を今までずっと教えてきたのです。
では、どの様にして教えてきたかと言いますと、、、
話が少し混み入ってしまうので、一度に書きたい所ですが、又次回に続けたいと思います。
(▼後に、続きを書きました)
個人的な創作の話でしたが、ここまでお付き合い頂いて、本当に感謝申し上げます。
そして、少しでも太極拳にご興味を持って下さったなら、嬉しい限りです。
それでは、、、非常感謝、再見!