太極拳とカンフーのブログ『天天練功夫』

ある指導者の、あれこれ武道に関する日記です

相手の立場に立った太極拳レッスンとは? ~スポーツクラブ編

徐言偉、健康太極拳レッスン

長年の間、スポーツクラブで太極拳レッスンを行っていますが、今日は〝相手にとって本当に役に立つレッスン〟とは何かを考えてみます。

 

ざっと言えば、以下の様な内容になります。

 スポーツクラブとはどういった所か?

スポーツクラブでは、年齢層や体力、初心者、経験年数などが異なるお客様が来られています。そして、スポーツクラブは各個人のレッスンではなく❝グループレッスン❞となります。
私はスポーツクラブで教え始めた頃、日本で最も普及している二十四(24)式太極拳*1をプログラムとして用いていました。


ところが進めている内にお客様の人数が減り、反応が今一つとなり、今のままの行い方では焦点が合っていないのではと感じました。

 

二十四式太極拳とはどういったものか?

それでまず、二十四式太極拳の構成はどうなっているのかを、改めて考えてみました。


二十四式太極拳は、24個の技で構築されているので〝二十四式〟と呼ばれています。
そしてこの24個の技を、一連の連続動作で行います。

つまり1番目の動きは何か、2番目は何か、、、というふうな構造になっています。

 

この特徴に従って、プログラム内容は24個の技が完成できるように組まなくてはなりません。

これが一般的な二十四式太極拳の教え方です。

 

お客様の立場に立つとはどういうことか?

そこで実際にお客様に対してこの一般的な教え方で行ってみると、この24個の技をお客様が覚えるだけでも大変でした。

つまり〝動作が多すぎる〟ということです。
それにそのプログラムだと、途中参加からでの練習は難しくなります。
例えば、初めて来られた方は今までの動きが分らないので、皆の動きについて行けません。

でもグループレッスンですので、その方にだけに教えるわけにもいきません。
また、動作を忘れた方や欠席される方もおられますが、そうした方は以前の技の動きが分らないままなので、この場合も途中参加は難しくなるのです。

 

そうすると二十四式をいつまでに完成させるのか?という問題も出て来ます。

完成というのはつまり、最終的に皆と一緒に二十四式太極拳(型の流れ)を全て通さなければ意味がないということです。

毎回ずっと同じメンバーなら出来ますが、グループレッスンのように毎回参加するメンバーは違う、欠席者がいる、また以前の動作を忘れた方がいる、となると非常に難しいのです。


色々な問題が多すぎて、自分でもよく分からなくなりました。

 

結局、どうすれば良いのか

それで、もう一度、お客様の立場に立って考えて見ました。
よく考えて見ると、スポーツクラブに来られたお客様の目的は競技大会の出場や、技術の追求ではなく、つまり ❝健康のため❞ に来られているのです。

すると問題点がはっきりと見えてきます。

そしてどうすれば解決するのかをまとめてみました。

 

①、連続動作(型の流れ)の短い太極拳を行う
こうすることで覚えやすくなり、または覚えなくても良くなり(できれば覚えてほしいですが)、連続動作も完成しやすく達成感が得られます。

初めての方でも難しくなくすぐ行えるので、太極拳を始めやすくなります。


①を更に細かく分けて練習する

これにより欠席者でも未経験者でも、途中からでも分かり易く、無理なく参加できるようになります。


③、種類を増やし、楽しくする

同じ太極拳をずっと行うのではなく、種類を増やして参加者が飽きないようにします。


④、太極拳の流れを完成する期間を決める


目的はお客様の ❝健康❞ の為 なので、二十四式太極拳に拘る必要はないと思います。

それをやめて、伝統太極拳である『陳・楊・呉・孫・武*2』式太極拳をお客様に合わせて、連続動作の数を減らし、自分のオリジナルのプログラムを作りました。

このプログラムでは、同じ内容のプログラムを1ヶ月続けて(週1回/時間の場合は、1ヶ月で4回となります)、3ヶ月で完成できるようにしました。

これでワンクールは3ヶ月という短い期間になります。
これは1ヶ月で4回の同じ内容のプログラムとなりますので、1ヶ月に1度でも参加すれば、このプログラムを体験したということになります

動作の数も少ないので途中参加の方でもついて来れる、といったわけです。


このプログラムを名付けて4フォ―)サイクルプログラム〟と呼ぶようにしています。

徐言偉、スポーツクラブ用の健康太極拳レッスン

これで、問題がすべて解決出来たのです。


そしてプログラムは出来たけど、実際に行ってみたらどうだったでしょうか、、、(ちょっとした心配も💦)
ですがこの方法で実際に行うと、生徒さんはどんどん増えて、ストレスのない楽しいレッスンとなりました(集客率は常に120%です、やった)!

 

そして、今も続けて行っています。
もちろん皆さんに飽きずに楽しんで頂けるように、プログラムの内容も変えていますよ。
次は長拳南拳、螳螂拳*3もやりましょう!

また、徐家オリジナルの『徐式(じょしき)太極拳』も行っていきたいと思っています。

これからも、お客様にレッスンを楽しんで頂けたら何よりです。


(補足:二十四式太極拳を否定しているわけではありません。

それをマスターしたい場合は、個人レッスン用のプログラムが必要となります。)

北京胡同の街

太極拳を教えておられる方、または習っておられる方等の参考になれば、嬉しいです。

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それでは、謝謝。

*1:1956年に発表された最初の制定拳で、楊式(ようしき)太極拳の主要な動作から構成されている。簡化太極拳とも呼ばれる。

*2:ちん・よう・ご・そん・ぶ式太極拳:「五大太極拳」と呼ばれる太極拳流派のこと。太極拳と呼ばれるものは、主にこの5つである。14世紀に陳式太極拳から始まった。

*3:中国武術の拳法の種類。長拳(ちょうけん)は相手との距離を保ちパンチや蹴りをストレートに繰り出す拳法、南拳(なんけん)は中国長江より南で行われていた武術で力強い動作が特徴、螳螂拳(とうろうけん)はカマキリの動きを真似たユニークな拳法。