太極拳とカンフーのブログ『天天練功夫』

ある指導者の、あれこれ武道に関する日記です

子共は株か、はたまた道具か?~心を置いてきてしまった大人達

中国武術、カンフーの練習をする子供達

以前テレビで、プロゴルファーになりたいという娘さんに付き添うお父さんの姿が放映されていました。

大分以前、何年も前に見たことなのですが、とても印象に残っています。

 

 ゴルフの特訓にはかなりお金がいるらしく、お父さんは真顔で

「いやいや、お金が掛かってしょうがないけどね、将来娘は必ずやもっと増やして返してくれると思って支援しています。返してね。」と本気で言っていました。

それを聞きながら練習をする小学生の娘さんの顔が、一瞬歪んだように見えたのは私だけでしょうか、、、。

その後、その娘さんはどうしているのでしょうか。プロゴルファーとして大成しているのでしょうか。

 

私は子どもを育てたことがありません。

でも小学生の子ども達にカンフーを教えているので、育てるお手伝いを少しさせて頂いています。

週に1日とか1時間とか短い間ですが、その間は心を込めて向き合っています。

 

また私のところでは、子ども達はカンフーを普通に練習するだけではなく、試合にも出ています。

目標があると上達しやすいし、子どもの頃に色々な経験をして視野を広げるのは大変学びになると思うからです。

でも試合となると、空気が一変するのを感じることがあります。

最初は体づくりの為に楽しく始めたはずのカンフーが、いつの間にか試合で上位に入ること、メダルを取ることのみにすり変わってしまいます。

私にも指導している立場や責任がありますので、また教室に通ってくれるのは親御さんあってのこと、それなりにお金と時間を使って下さっていることもあり、子ども達にやる気を出してチャレンジしてもらおうと頑張ります。

もちろん入賞できればそれはとても素晴らしいことですし、せっかく試合に出るならと、そこを目指して指導します。

そして入賞できた時には、共に大いに喜びます。

ですが、それも根底には ❝行き過ぎた結果主義❞ ではなく、一つの経験として試合に臨むことで、自分のことを知る手がかりや頑張る意欲をもつ大切さを知るなど、

これから社会に出ていく上で必要となることも身に付けて欲しいからです。

試合に出ることで得られるものは、何もメダルだけではないはずです。

 

でも、一部の大人には通用しないことがあります。

大人は、自分が苦しい思いをして練習するわけではないのです。

特にスポーツをほとんど行ったことのない方は、厳しい練習での身体のしんどさを分かっていません。

また上達には時間が掛かるものということや、ましてや上位に行くとなるとかなりの練習時間を要するということ、また各々に体と心のペースがあるということも。

そして、小さく未熟な子どもに掛かるプレッシャーというものも。

子ども達の多くは本当に苦しい練習を積み重ねて、色々なことを我慢してまで、心の底からメダルが欲しいと思っているのでしょうか。

 

昨年、中国に帰った時、今は武術のコーチをしている大学時代の同級生の話を聞きました。

中国国内での武術太極拳競技では、今、行き過ぎた成果主義が横行して選手の売買がなされているということを話していました。

スポンサーに〝今年は選手にメダルを〇〇個取らせる〟と契約時に約束しないといけないそうです。

もちろん、無理をして、一生ついてくるケガの事例も沢山あります。

友人はコーチの仕事を頑張っているのですが、疲労困憊していました。

 

日本では、そうはなって欲しくないものです。

これから子ども達や親御さんと向き合う方法を、少しずつ変えていくつもりです。

私のチームは弱小なのでそこまでのことはなかったとしても、、、でも、、、。

見失いそうになっていました。もっと多くの言葉が必要でした。

私の責任です。

子どもは大人の株でも、見栄を肩代わりするものでも、自分を表現する為の道具でもありません。

心をもった、一人の人間なのです。

 

(追記:今回は少し厳しい表現になってしまいましたが、常々から思っていることを誤解を恐れず申しました。以前から発信している内容と重なりますが、こうした想いが少しでも届くことを願って、自身も襟を正して励んでいきます。)