太極拳とカンフーのブログ『天天練功夫』

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健康の為の太極拳で〝膝を痛める〟ことがある? ~その原因とは

太極拳で膝を痛めることがある、徐言偉ブログ


今日は。

今回は長年伝えたいと思ってきた「健康の為に始めた太極拳で、なぜか膝を痛める人がいる」、その原因は何か?ということについて書きたいと思います。

この「せっかく健康の為に太極拳を始めたのに、膝を痛めてしまった」という話は、本当に良く耳に入ってきますが、これから太極拳を始められる方、またご興味のある方(または他のスポーツをされている方)のご参考になれば幸いです。

 

 

膝を痛める原因

太極拳の動きは、基本動作の殆どが〝膝を使った体重の移動〟です。

この体重移動をしっかり理解しないと、膝を痛めることになります。

痛める方は、初心者の方が多いようです。

 そしてその原因は、諸々あるようです。

よくある例は、膝が足のつま先を超えてしまって前に突き出している状態で動くことで、余分な体重が膝に掛かってしまい、重量オーバーで膝を痛めることなどです。

重量オーバーすると、膝関節内の靭帯損傷や炎症などが起こってしまい、痛くなる原因となります。

その他には、膝とつま先が同じ方向を向いていない為に膝の角度が不自然になり、痛めることがあります。
これらを改善するには、つま先に対して膝が前に突き出さなければ良いのです。

膝を痛めない太極拳の行い方、徐言偉ブログ

更なる元の原因


また私の長年の経験上、その元は股間節〟*1にあると考えています。


股関節は骨盤の下部が大腿骨と接しているところです。その下はです。
この構造上、股関節(骨盤の向き)の動きによって膝の角度が影響されます。
重心が安定している状態とは、骨盤が前傾した時に股関節が凹み、お尻が少し出て、膝が少し退く状態です。
逆に骨盤が後傾している時は股関節が前に出て、大腿四頭筋が固くなり、お尻が下に入った状態で膝が前へ出てしまいます。

この状態では、膝が足のつま先より前に出る状態となり、余分な体重が膝に掛かり痛めてしまいます

そして、この状態が、膝を痛める最も多い原因ではないでしょうか。

太極拳における股関節と膝の使い方、徐言偉ブログ

股関節と大腿骨の働き、徐言偉太極拳ブログ

(▲出典:『目でみる動きの解剖学・新装版』ロルフ・ヴィルヘード著)

 

膝を痛めない太極拳の行い方

ではどのように太極拳を行えば、膝は痛くならないのでしょうか。
先ほども少し触れましたが、私の考えでは骨盤を前傾させた状態で、太極拳を行った方が良い〟ということです。

前傾と言っても、腰椎をわざわざ反ることはしません。

自然に、少し前傾姿勢にするだけで良いのです。

この姿勢は、全身が楽に動ける状態でもあります。
太極拳はじっとしているわけではなく絶えず動きますので、股関節を動ける状態にしておかないと、全身がスムーズに動けないからです。


分かりやすく言えば、ゴルフを打つ前の〝構え〟の状態となります。

また、フィギュア・スケートなんか見ていてもわかりますが、股関節を前傾させて氷上を滑っているからこそ、安定した滑りが出来ています。

 

行い方は、両足を肩幅より少し広く平衡に開いて、膝を少し曲げ、股関節を後ろに少し凹まして、骨盤を前傾させます

この時は重心を下に落とした状態で、お尻が少し出ている状態です。

両手を丸くしてお腹の前に置き、これで完成です。

この姿勢から太極拳を始めるわけです。


そして、動いている時も股関節を前に出さずにしておくのです。
これで、膝を痛める可能性は低くなると思います

 

また、この方法は、万人に対しての絶対のやり方ではありません。

例えばX脚や猫背のなど方がおられますので、この姿勢では難しい、また出来ないということもあるかも知れません。

先生が言ったから、絶対にそうしなければならないということはありません。

例え良い方法だと言われても、自分の体に合わなければすぐ調整して別の方法で行うことが最も大事なことだと思います。

無理をしてはいけません。

その他注意点①

そして、その他に太極拳を行う上で大切なことは〝やりすぎない〟ことです。
長時間練習しないことです。
もちろんこれも人によりますが(例えば競技の為に上級者が練習する時などは、別の話になります)

特に初心者の方は年齢や体力・筋力の付き方は様々なので、練習を長時間行うと筋肉疲労が起こってしまい、それに伴い集中力も低下して色々な怪我に繋がる恐れがあるからです。
また、練習中にこまめに休みを取って、身体の疲れを取ることも心掛けましょう。


私の場合は、一度に行う時間は〝1時間~1時間30分〟くらいですね。

ゆっくりと時間を掛けて、生徒さんに授業を行っています。

膝を痛めない太極拳の楽な練習方法、徐言偉ブログ

その他注意点②

また、初心者の方は姿勢を高くすることがポイントとなります。

〝姿勢を高くする〟とは、膝を曲げる角度を深くしすぎないで軽く曲げて、目線を高く保った状態のことです。

歩幅は肩幅くらいで良いかと思います。

この姿勢だと大腿四頭筋や膝に掛かる体重はオーバーせずに、関節の可動域内で重心移動ができるので膝に掛かる負担は軽く、楽になります。

 

 以上のことを踏まえた方法を取ることにより、幸いにも、私のクラスでは今までに膝を痛めた方はおられません。

 

最後に

いずれにしても、太極拳を行う際は自分の身体の状態に合わせることが一番大切だと考えます。
太極拳を指導されている先生方は色々な知識を持っておられるので、生徒さんはご自身で今の身体の状況を直接相談してみましょう。

そうすることで、きっと良い太極拳の練習ができると思います。

皆さんが健康の為の太極拳を、もっと楽しめます様に👍

 

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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

これから暑い夏がやってきますが、熱中症には気をつけて、運動をして体力をつけて過ごして行きたいものです。

謝謝!

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*1:股関節:大腿骨の先端にあるボール状の大腿骨骨頭と、骨盤側で骨頭の受け皿になる深いお椀状の臼蓋との組み合わせで出来ている、球関節のこと。