中国武術について ~哲学書・韓非子から思う
武術について
〝儒以文乱法,侠以武犯禁
『儒者*1は学問をもって法を乱し、游侠(侠客)*2は武力をもって法を犯す』〟
政治や社会に対する不平不満を表した言葉だと思います。
儒教*4の教育を受けた儒学者など、いわゆる文人達が違う考え方を文書を使って主張したのです。
一方、武術が出来る人達はやむえず、武を持って反抗したのです。
❝侠❞というのは必ず武術ができなければなりません。
この武術こそ今日の武術の原型なのです。
❝侠❞の武術は大勢の兵隊の戦い方と違って、個人的なものです。
ですから、流派や技が多くて数えきれないほどです。
技を秘密にしたのも、この為です。
また侠客は❝刺客*5❞にもなります。
中国歴史上、この❝刺客❞が多くて『刺客列伝』まであります。
よく知られていた刺客は始皇帝の暗殺を企てた荊軻(けいか)*6です。
荊軻の武術は如何なるものか、非常に興味深い所です。
いずれにしても、彼らが用いる武は健康長寿のための健康法でもなければ、娯楽のための踊りでもない、命を奪うための技術です。
そして、その武術は命の危機と隣合わせだった為、かなりの鍛錬を要しました。
その為、身体を使う技術として大変優れたものでもあります。
ですが今のこの時代は、命を奪うための武術は基本的には必要がなく、ほとんどの人が健康のために武術を練習しています。
そのことにより、身体も心も鍛えられます。
また護身術としても武術は重宝しますが、武を用いる社会ということはそれだけ危険が多い世ということにもなります。
実際に武術で身を守ったり、武力を持ち出して戦わないといけない社会ではなく、法や思想で秩序を守れる社会ならまだ安泰だと思います。
〝利益や命を奪い合う戦い、本当の武術、またはそうした心〟
というものが無い平和な世であって欲しいと、願って止みません。
无论什么时代,国与国,人与人之间的争斗总是不断发生。但、还是真切希望世界是一个和平的,没有为了利益之争,而损害生命的所谓的真正武术。
(韓非子の思想について、とても上手く書いているサイトを見つけました▼)
「韓非子」の思想とは?名言を書き下し文と現代語訳で解説 | TRANS.Biz
今日は簡単に記しました。ありがとうございました。
*1:儒学者ともいい、儒家思想を基本にした学問を自らの行為規範にしようと学び、研究・教授する人のこと。
*2:ゆうきょう:強きをくじき、弱きを助け、信義を重んじ、義のためには命も惜しまないこと。侠客。
*3:かんぴし:中国戦国時代の法家である韓非の著書。内容は春秋戦国時代の思想・社会の集大成ともいえるもの。韓非は性悪説を説く儒家の荀子に学んだといわれ、法に外れた行いを礼による徳化で矯正するとした荀子の考えに対し、法によって抑えるべきだと主張した。
*4:紀元前の中国で、孔子の打ち立てた思孝・信仰がもととなり、弟子たちによって深められた。中国では儒家思想という。
*5:しきゃく:暗殺をする者、もしくは犯罪組織で殺害を担当する者。中国でいう刺客とは、大儀や義理により暗殺を行った烈士のこと。
*6:けいか:中国戦国時代末期の刺客。燕の太子の命を受け、策略を用いて秦王の政(後の始皇帝)を暗殺しようとするが、失敗し逆に殺された。